【物語】プロローグ

プロローグ 

 

吉田青年は、悩んでいた。

彼は大学3年生。スポーツ特待生として、有名大学に進学。21歳。身長166センチ。体重65キロ。体脂肪率7%。恵まれた体格とは言えないが、高校生の時、インターハイ(全国大会)で6位入賞を果たす。

それがきっかけで、現在の大学の部の監督にスカウトされ、今に至る。

 

そんな経歴はさておき、彼は悩んでいた。

 

何に悩んでいるのかと言うと、もちろん、彼の競技スポーツについてだ。

彼は、実は大学に入学してから、一度も大会で成績を残せていなかった。

そう、一度も。インターハイ入賞という華々しい経歴を持ち、期待されて入学したにも関わらず、成績を残せない。

それどころか、年々悪くなるばかり。

 

吉田は、非常な努力家で、人の3倍は練習をしているような真面目な選手だった。

それなのに、周りにどんどん追い抜かれてゆく。

その現状をどうすればいいのか、彼は入学してしばらく結果が出ずにいるとき以来、ずっと悩み続けている。

 

競技生活も残り1年を切り、焦る中で、彼はあることを決意した。

何を決意したのか。

それは、人に相談をする、そんな簡単なことの決意だ。

だが、彼にとって、この決意は簡単ではなかった。

何故なら、彼は非常に頑固だからだ。

人の倍以上努力しているんだから、いつかきっと報われる。そう信じ続けていた。

だから、人に相談をすることはなかった。

競技自体でも、具体的な技術などのアドバイスは、自分の信念がある為に、中々素直に聞く方ではなかった。

 

そんな彼が、もう自分では解決できないところまで悩んで、ついに決意した。

そこで相談相手に選んだのが、佐々木青年だ。

佐々木青年と吉田は、実は中学、高校と同じクラスで6年間を共にした。

 

そして、そのまま同じ大学に入学した。

しかし、佐々木は何かスポーツで素晴らしい成績を収めているというわけではなかった。

むしろ、100メートルを20秒はかかるというくらい、スポーツが苦手な青年だ。

彼は、一般入試で吉田と同じ大学に入学していた。

 

一見すると、スポーツの相談をするのに、これほどふさわしくない相手を探すのもなかなか難しいと言わざるを得ない人物であるようにも思える。

しかも、中学、高校と6年間を共にしていながら、吉田は佐々木のことをそれほど深くは知らない。

一緒に遊んだこともなければ、趣味の話をしたこともない。

会えば挨拶はする、そのくらいの仲だ。

 

しかし、それでも吉田は、相談相手に佐々木を選んだ。

何故なら、吉田は、佐々木が中学の頃からずっとあることをしていたのを知っていたからだ。

そして、それは吉田が今までしたことのない行為だったからだ。

 

その行為とは、読書である。

 

吉田は、自分の考えだけでは限界があると思い、世の中でよく言われるような「悩んだときは読書をしなさい」という言葉をついに受け入れ、読書をしようと考えた。

しかし、何から読んでよいのか、さっぱりわからない。

メンタルトレーニングの本やなんかは一通り読んだ。だけど、どうにも難しい。

 

そんな時に思い出したのが、学生時代、暇さえあればずっと難しそうな本を読んでいた佐々木の存在だ。

 

佐々木ならきっと、自分の悩みにピッタリな本を紹介してくれるはず。

そんな軽い気持ちで相談に行こうと決意したのだ。

 

佐々木のいる場所は知っている。

大學に入ってからも、お昼時はいつも、食堂の隅のテーブルで本を読んでいる。

 

さぁ、佐々木、俺はどうしたら結果が残せるんだ。そのヒントになる本を教えてくれ。

 

そんな気持ちを持ち、吉田は12月の寒空の元へ、勢いよく飛び出した。

 

 

 

さて、本章に入る前に、この物語の説明をしておきます。

 

この物語は、今、スポーツに悩んでいる全ての方に読んで欲しい物語です。

特に、大学生や高校生に読んでいただき、何か悩みを解決するヒントを与えられればと、そう願って執筆しています。

 

この物語は、スポーツに悩む吉田青年が、読書好きの佐々木青年を訪ねるところからはじまります。そして、どんどん複雑になる吉田青年の悩みを、佐々木青年が根気強くヒントを与えることで、吉田青年自身が解決できるように導く、という物語になっています。

 

ところで、吉田青年の競技スポーツが何なのか、それはこの物語の本質とはあまり関係がないので、ご想像にお任せします。

あなたの競技に当てはめて、自由に想像しながら、吉田の身になったつもりで佐々木の言に耳を傾けてみてください。

 

そして、佐々木の言葉、知恵の中から、何かヒントを見つけ出していただければ、これほど幸せなことはありません。

 

先に断っておきますが、この物語を読んでも、競技力は上がりません。

だけど、競技力を上げるために必要な道具である、あなたの心の状態を良くするためのヒントは、沢山与えられるように、用意してあります。

心が道具?何のこと?

と思った方は、ぜひ本章で佐々木の言葉に素直に耳を傾けてみてください。

あなたの人生観が、変わるかもしれませんよ。

 

本章で語られる佐々木の知恵は、全て先人から学んだことです。

先人からの言葉には、沢山の生きるためのヒントが詰まっています。

 

あとは、あなたのそのステキな感性で、沢山のヒントを受け、その知恵を使い、さらに磨きぬいてみてくださいね。